インボイス制度に関するご紹介、5回目です。
今回は、少額な返還インボイスの交付義務免除についてです。

この記事についてやその他の質問等、当税理士事務所のLINE公式アカウントにて受け付けています。お気軽にご質問ください。
インボイスについて質問する

少額な返還インボイスの交付義務免除

「少額な返還インボイスの交付免除」とは、返金や値引きなどをする場合に1万円未満であれば、請求書等をインボイス制度に対応させる必要がないということになります。
買手は、インボイス制度の「適格請求書等」を発行しなくてもいいということです。
また、売手側は、この制度の範囲内での取引に関して「適格請求書等」の保存義務も免除されます。

売手からすれば保存義務が免除され、買手からすれば交付義務が免除されます。

例えば、報酬や売上を口座振りこみで行う際に振込手数料を差引いて振り込む等がよくありますが、そういった場合に適用されます。

画像
国税庁HP「少額な返還インボイスの交付義務免除の概要」より抜粋

対象者要件

特に対象者に用件はなくインボイス制度登録事業者が行う1万円未満の取引であれば適用できます。

適用期間

前回までに書いた経過措置の「2割特例」や「少額特例」、「免税事業者からの仕入れに対する経過処置」は、経過措置なので適用期間が定められていました。

「少額な返還インボイスの交付義務免除」は、特に定められていません。
インボイス制度の導入される2023年10月1日から開始となります。

1万円未満の判断

前回の「少額特例」では、「税込」で一回の取引が1万円未満とされてましたが、こちらの場合は税込か税抜きかの判断は必要なくただ「返金・値引した額」となっています。
例えば、「税込」の商品を「税抜き」で返金・値引することはしないと思います。「非課税」等の取引でも返金・値引の際だけ消費税がかかるなんてことはないので、実際に「返金・値引した額」が1万円未満という認識だけで大丈夫です。

注意

会計処理によって適用できない

報酬や売上の振込手数料を差引くことたとえにした場合、売手側の会計処理は2パターンあります。

  1. 売上の値引きとして売上額から差引く。(売上額のマイナスを計上する)
  2. 売上額は、そのままに振込手数料を立替てもらい、その分の支払とする。(必要経費として計上する)

例えば100万円の売上を請求し後日、買手側が振込手数料550円を差引いて999,450円振り込んできた場合
1.の場合は、売上を999,450円に修正する
2.の場合は、売上は、100万円のまま、別で手数料を550円払ったとする。

この二通りの処理によってどういう変化が出るかを見てみます。

所得税の計算


所得税の計算上、1.と2.では所得は変わりません
「売上 ー 必要経費 = 所得」となるので売上を下げようと必要経費を上げようと所得に変わりはないわけです。

消費税の計算(本則課税)


消費税の計算上(本則課税の場合)も納税額は変わりません。
「売上に係る消費税 - 仕入に係る消費税 = 消費税納税額」なので結果、納税額は変わりません。

消費税の計算(簡易課税制度)


「簡易課税制度」を使うと納税額が変わる可能性があります。
「簡易課税制度」は仕入等にかっかた消費税を集計せずに業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って「仕入税額控除額」を算出します。
実際に発生している金額は、売上しか見ないので仕入をどんなに上げても意味がありません。
「簡易課税制度」の場合は、必ず1.にして売上額を下げます。

少額な返還インボイスの交付義務免除の場合


少々話がそれましたが、「少額な返還インボイスの交付義務免除」は1.
の場合しか適用できません。
「返金・値引」に対して適用されるので2.のように必要経費として計上するという処理には適用されません。
2.にする場合は「適格請求書等」の保存が必要になります。

終わり

「少額な返還インボイスの交付義務免除」をご紹介しました。
今回は例として振込手数料の話をメインにしましたが、取引先との慣習で値引きや、相殺などよくあるかと思います。
取引の内容をよく確認して適用できるか確認してみましょう。

当税理士事務所では、FaceBookやLINE公式アカウントでのお問い合わせを受け付けていますのでぜひご相談ください!