【決算書の読み方】貸借対照表(B/S:Balance Sheet)
貸借対照(B/S)は、会社の所持する資産を表記しています。表損益計算書(P/L)が会社の「1年間の稼ぎ(フロー)」を表すのに対し、会社の「これまでの財産の蓄積と出処(ストック)」を一目で表す決算書、それが貸借対照表(B/S:Balance Sheet)です。
左側に「お金を何に変えて持っているか(資産)」、右側に「そのお金をどこから持ってきたか(負債・純資産)」が記載されており、左右の合計金額が必ず一致(バランス)するのが特徴です。左右それぞれの合計値、【資産の部 合計】と【負債及び純資産の部 合計】は必ず一致します。
損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)の記事はこちらから
1. 貸借対照表のサンプルモデル
【実例サンプル】貸借対照表
202X年3月31日 現在 (単位:千円)
| 資産の部(左側:お金の使い道) | 金額 | 負債及び純資産の部(右側:お金の調達源) | 金額 |
| 【流動資産】 | 17,550 | 【流動負債】 | 7,200 |
| 現金・預金 | 12,000 | 買掛金 | 1,450 |
| 売掛金 | 5,500 | 未払金・未払費用 | 2,300 |
| 短期貸付金 | 50 | 未払法人税等(※1) | 3,300 |
| 預り金 | 50 | ||
| 短期借入金 | 100 | ||
| 【固定資産】 | 12,430 | 【固定負債】 | 13,450 |
| (有形固定資産) | 役員借入金 | 450 | |
| 車両運搬具(備忘価額) | 1円 | 長期借入金 | 13,000 |
| 器具備品 | 1,999 | 【負債の部 合計】 | 20,650 |
| (投資その他の資産) | |||
| 保険積立金 | 2,400 | 【株主資本(純資産)】 | 9,330 |
| 長期前払費用 | 30 | 資本金 | 1,000 |
| 敷金・保証金 | 8,000 | 利益剰余金 | 8,330 |
| (うち繰越利益剰余金)(※2) | (3,435) | ||
| (うち当期純利益)(※3) | (4,895) | ||
| 【資産の部 合計】 | 29,980 | 【負債及び純資産の部 合計】 | 29,980 |
貸借対照表の全体像:3つのブロックを押さえる
B/Sは大きく分けて「資産」「負債」「純資産」の3つの箱で構成されています。それぞれのブロックの読み解き方を見ていきましょう。
1. 資産の部(左側):どうやってお金を活用しているか?
- 【流動資産】:現金・預金・売掛金などの主に1年に内に変動する資産です。会社の「支払能力」を測る上で最重要のブロックです。
- 【固定資産】:有形固定資産(車両・建物・器具備品工具など)やその他投資資産(保険積立金・長期前払費用)など簡単には換金できない、事業のために長期で使う資産です。
2. 負債の部(右側・上):いずれ返さなければならない「他人の資金」
- 【流動負債】:1年以内に返さなければならない債務です。材料代などの買掛金や、未払の経費、そして未払法人税等(※1)がここに含まれます。P/Lで計算された法人税等は、決算日時点ではまだ国に支払っていないため、ここに未払金としてプールされ、翌期に支払うことになります。
- 【固定負債】:長期的な返済義務のある債務です。銀行からの長期借入金などが該当します。また、役員借入金は「社長が会社に貸し付けたお金」です。
3. 株主資本・純資産の部(右側・下):返す必要のない「自分の資金(体力)」
創業時の資本金と、会社が過去に稼ぎ出して蓄積してきた利益の合計です。
- 繰越利益剰余金(※2):1期目、2期目の黒字の蓄積(内部留保)です。
- 当期純利益(※3):先ほどの損益計算書(P/L)の1年間の最終結果である4,895,000円が、ここにそっくりそのまま飛び込んできます。
まとめ:P/LとB/Sはつないで見る
損益計算書(P/L)でいくら売上を上げて利益を出していても、貸借対照表(B/S)の現預金が枯渇していれば、会社は「黒字倒産」してしまいます。逆に、B/Sがどんなに安全でも、P/Lが赤字続きであれば会社の体力(純資産)はどんどん削られていきます。
決算書を読むときは、必ずこの2つを並べ、「今期稼いだ利益(P/L)が、正しく会社の資産や体力(B/S)に変わっているか」をチェックする癖をつけましょう。
中小企業の経営者がB/Sで絶対チェックすべき2つの健全性指標
チェックポイントA:債務超過(自己資本がマイナス)になっていないか
右下の「純資産の部」がプラスであるかどうかを確認します。ここが赤字(マイナス)になっている状態を「債務超過」と呼び、会社の全資産を売り払っても借金を返せない財務破綻の状態を意味し、銀行融資は極めて困難になります。 今回のモデルは純資産が9,330,002円あり、自己資本比率は31.1%(9,330,002 ÷ 29,980,002)と、中小企業として非常に理想的な「クッション(体力)」を備えています。
チェックポイントB:短期の支払い能力があるか
決算時に【流動負債】の合計額分の【流動資産】がない場合決算期以降の支払能力に不足が生じている可能性があります。次の説明「経営分析指標」にも出てくる流動比率を計算し【流動資産】が【流動負債】に対し100%以上であること、理想値の200%にどれだけ近づけているかで会社の安全性を図りましょう。
数字を鵜呑みにしてはいけない!隠れたリスクを見抜く裏目線
① 現預金残高と当期純利益の「ズレ」
決算時の現預金残高は、その期末における会社の手元の資金量です。この金額が「当期純利益」とあまりにも乖離している場合は注意が必要です。
- 「当期純利益 > 現預金」の場合: 利益は出ているのにお金がない「勘定合って銭足らず」の状態です。期末の売掛金や未成工事支出金(仕掛品)が膨らんでいる、あるいは借入金の元本返済負担が重く、キャッシュが流出している可能性(黒字倒産のリスク)があります。
- 「当期純利益 < 現預金」の場合: 翌期に支払うべき買掛金や未払金などの債務が多額に残っている状態、あるいは減価償却費などの「キャッシュアウト(現金の支出)を伴わない経費」が大きく計上され、会計上の利益だけが圧縮されている状態などが考えられます。
② 売掛金・棚卸資産(在庫)の水増し
流動資産(すぐ現金化できる資産)が多くても安心はできません。 売掛金の中に「回収不能な不良債権」や「架空売上」が混ざっていたり、棚卸資産の中に「売れない不良在庫」が計上されたままになっていたりすると、見せかけの資産額だけが膨らみます。売上高に対する回転期間(回収にかかる月数)が同業他社より不自然に長い場合は、これらが隠れているサインとして金融機関等から疑われます。
③ 固定資産と長期借入金のバランス
高額な固定資産(機械や車両など)を購入した場合、通常は銀行借入やローンを利用するため、資産側の「固定資産」と負債側の「長期借入金等」が同時に増加します。 しかし、固定資産が増えていないのに「長期借入金」だけが増加している場合、その資金は赤字補填や運転資金に回されたことになります。とはいえ、運転資金への投入であっても、それが明確な「売上拡大に向けた前向きな投資(仕入増加や人材採用など)」であれば、負債が膨らむこと自体は必ずしもネガティブではありません。借入の「使い道」が重要です。
④ 買掛金と流動資産のバランス(短期の支払い能力)
期末の「現預金と確実な売掛金(当座資産)」の合計額に対して、「買掛金や短期借入金(流動負債)」の残高が上回っている状況は、極めて危険です。これは翌期に「手元の支払い能力を上回る債務」を抱えている状態であり、資金ショート寸前と言えます。特に買掛金が不自然に急増している場合は、支払いを遅らせている(ジャンプしている)末期症状が疑われます。
⑤ 未払金・未払費用に隠れた滞納リスク
流動負債の未払金の中に、消費税や社会保険料の「滞納」が隠れていないかを必ず確認します。これらは金融機関への返済よりも優先して差し押さえの対象となるため、銀行やファクタリング会社が極めて厳しくチェックするポイントです。損益計算書の人件費に対する法定福利費の割合が極端に低い場合なども、社保滞納のサインとなります。
⑥ 役員借入金の二面性
役員借入金は、いわゆる「社長個人のポケットマネーから会社に貸し付けたお金」です。 金融機関の融資審査においては、これは単なる負債ではなく「実質的な自己資本(返済しなくてよいお金)」としてメガティブにとらえません。しかし、この金額が不自然に膨れ上がっている場合、税務署から「社長個人の役員報酬等の収入に見合わない貸付額ではないか(売上の除外など不正な資金源ではないか)」と疑われるリスクが生じます。
⑦ 繰越利益剰余金が語る「過去の成績」
純資産の部にある繰越利益剰余金は、会社設立から現在までの「毎年の損益が積み重なった数字(内部留保)」です。 たとえ今期の当期純利益が大きく黒字であったとしても、ここが少ない(あるいはマイナスである)場合は、「過去に大きな赤字を出していた時期がある」という会社の歴史を表しています。ここがマイナスになり、資本金を食いつぶしてしまうと「債務超過」という極めて危険な状態になります。
【決算書の読み方】数字で自社の健康状態を見抜く「経営分析指標」徹底解説
損益計算書(P/L)で売上や利益を確認し、貸借対照表(B/S)で資産と負債のバランスを見たら、次に行うのが「経営分析」です。
【実例サンプル】貸借対照表
202X年3月31日 現在 (単位:千円)
| 資産の部(左側:お金の使い道) | 金額 | 負債及び純資産の部(右側:お金の調達源) | 金額 |
| 【流動資産】 | 17,550 | 【流動負債】 | 7,200 |
| 現金・預金 | 12,000 | 買掛金 | 1,450 |
| 売掛金 | 5,500 | 未払金・未払費用 | 2,300 |
| 短期貸付金 | 50 | 未払法人税等(※1) | 3,300 |
| 預り金 | 50 | ||
| 短期借入金 | 100 | ||
| 【固定資産】 | 12,430 | 【固定負債】 | 13,450 |
| (有形固定資産) | 役員借入金 | 450 | |
| 車両運搬具(備忘価額) | 1円 | 長期借入金 | 13,000 |
| 器具備品 | 1,999 | 【負債の部 合計】 | 20,650 |
| (投資その他の資産) | |||
| 保険積立金 | 2,400 | 【株主資本(純資産)】 | 9,330 |
| 長期前払費用 | 30 | 資本金 | 1,000 |
| 敷金・保証金 | 8,000 | 利益剰余金 | 8,330 |
| (うち繰越利益剰余金)(※2) | (3,435) | ||
| (うち当期純利益)(※3) | (4,895) | ||
| 【資産の部 合計】 | 29,980 | 【負債及び純資産の部 合計】 | 29,980 |
経営分析とは、決算書の数字を組み合わせて比率を算出し、会社に「支払い能力はあるか」「財務の安全性は高いか」「効率よく儲けられているか」を丸裸にする健康診断のようなものです。
今回は、主要な経営分析指標の正しい計算式と見方を整理し、当事務所の「売上5,000万円・3期目黒字モデル」の数値を実際に当てはめて徹底分析します。自社の決算書をお手元に用意して、見比べながらお読みください。
1.短期的な支払い能力(資金繰りの安全性)を見抜く
①流動比率
②当座比率
2.中長期的・根本的な財務の「体力」を見抜く
①固定比率
②固定長期適合率
③自己資本比率
3.投資家・総合的な「経営効率」を見抜く
①ROE(自己資本当期純利益率)
②ROA(純資産利益率)
4.会社が創り出した独自の「儲けの源泉」を見抜く
①付加価値額
②付加価値率
5.「債権・債務の回収と支払スピード」を見抜く
①売掛債権回転率&回収機関(回転月数・日数)
②買掛債権回転期間(支払月数)
1. 短期的な支払い能力(資金繰りの安全性)を見抜く
まずは、会社が「目先1年以内に倒産するリスクがないか」をチェックする指標です。
① 流動比率
- 【意味】 短期(1年以内)に返済すべき負債に対して、同じく短期に現金化できる資産がどれだけあるか。
- 【目安】 120%以上(理想は200%以上)。100%未満は「近々手元の現金がショートする」危険信号です。
サンプル企業の数値で分析:
・17,550,000円(流動資産) ÷ 7,200,000円(流動負債) × 100 = 243.7%
・【診断結果】 理想である200%を大きく超えており、目先の資金ショートのリスクは極めて低く、非常に安全です。
② 当座比率
- 【意味】 短期(1年以内)に返済すべき負債に対して、同じく短期に現金化できる資産がどれだけあるか。
- 【目安】 120%以上(理想は200%以上)。100%未満は「近々手元の現金がショートする」危険信号です。
サンプル企業の数値で分析:
・12,000,000円 + 5,500,000円) ÷ 7,200,000円 × 100 = 243.0%
・【診断結果】 今回のモデルは棚卸資産(在庫)を持たない前提のため、流動比率とほぼ同等の極めて高い安全性を誇っています。
2. 中長期的・根本的な財務の「体力」を見抜く
次に、会社の基礎体力や、設備投資のバランスが崩れていないか(借金に依存しすぎていないか)を分析します。
① 固定比率
- 【意味】 回収に時間がかかる「固定資産」を、返す必要のない「自己資本(純資産)」でどれだけ賄えているか。つまり固定資産の購入にどれほど借入等の外部資本を投入しているかを図る。
- 【目安】 100%以下が理想。100%を超えている場合、設備投資などの資金を長期・短期の借入金(他人の資本)に頼っている証拠です。
サンプル企業の数値で分析:
・12,430,002円(固定資産) ÷ 9,330,002円(自己資本) × 100 = 133.2%
・【診断結果】 100%を超えていますが、小規模な中小企業では一般的です。では、次の「固定長期適合率」でセーフティネットを確認しましょう。
②固定長期適合率
- 【意味】 固定比率の緩和版。固定資産が「自己資本 + 長期の借入金(固定負債)」という、すぐに返さなくてよい安定した資金で賄われているかを見ます。
- 【目安】 100%以下が絶対必須。ここが100%を超えている会社は、長期で使う資産を「すぐ返さなければならない短期借入金や未払金」で買っているため、資金繰りがいつ破綻してもおかしくありません。
サンプル企業の数値で分析:
・12,430,002円 ÷ (9,330,002円 + 13,450,000円) × 100 = 54.5%
・【診断結果】 100%を大幅に下回っており極めて安全です。長期資産(敷金や設備)が、しっかりと長期借入金と自己資本の範囲内で調達されている健全な証拠です。
③自己資本比率
- 【意味】 会社全体の全資産のうち、返済不要な自分の元手が何%あるか。会社の「体力・クッション」を表します。
- 【目安】 20%以上(30%超で優良)。マイナス(債務超過)は倒産危険度が非常に高く要警戒です。ただし売掛先の信頼性が高ければ、売掛債権を買い取るファクタリング等は利用可能なケースが多くあります。
サンプル企業の数値で分析:
・9,330,002円 ÷ 29,980,002円 × 100 = 31.1%
・【診断結果】 30%を超えており、中小企業としてトップクラスの優良な体力を持っています。
3. 投資家・総合的な「経営効率」を見抜く
預かったお金や資産をどれだけ効率よく利益に変えられたか、という「稼ぎの効率」の指標です。
①ROE(自己資本当期純利益率)
- 【意味】 株主が出資したお金(自己資本)を使って、どれだけ効率よく最終利益を出したか。借入等の外部資本に頼らず生み出された利益の比率でもあるが、投入された資本の利用効率として使うことの方が多い。
- 【目安】 8%〜10%以上で優良。主に投資家が重視する指標です。中小企業では、外部投資を受けることが多くないためそれほど重要視されていません。
サンプル企業の数値で分析:
・4,895,000円(当期純利益) ÷ 9,330,002円(自己資本) × 100 = 52.4%
・【診断結果】 驚異的な高水準です。少ない元手で非常に効率よく利益を叩き出しています。
② ROA(総資産利益率)
- 【意味】 会社が持つすべての資産(借入金含む)をフル活用して、どれだけ利益(経常利益)を上げたか。会社の総合的な効率性を示します。
- 【目安】 5%以上で優良。ここが極端に低い(ビジネス自体が儲かっていない)のに、借入等で無理に資金調達を繰り返そうとする場合は、ビジネスモデル自体の限界が近い恐れがあります。
サンプル企業の数値で分析:
・8,195,000円(経常利益) ÷ 29,980,002円(総資産) × 100 = 27.3%
・【診断結果】 目安の5%を遥かに凌駕する27.3%です。資産に無駄がなく、すべてのレバレッジが利益に直結しています。
ROAを高める(=経営効率を上げる)ためには、利益を増やすだけでなく、『利益を生まない不要な資産を処分する』ことも重要です。使っていない機械設備や車、回収不能な売掛金、過剰な在庫などを整理してB/Sをスリム化することで、ROAは劇的に改善し、キャッシュフローにも余裕が生まれます。
4. 「債権・債務の回収と支払スピード」を見抜く
税理士だけでなく、銀行やファクタリング会社が「最も目を光らせてチェックする」のがこのセクションです。ここに異常値があると、一発で「粉飾」や「黒字倒産寸前」が見抜かれます。
①売掛債権回転率 & 回収期間(回転月数・日数)
- 【意味】 売上高に対して売掛金が何ヶ月分残っているか。つまり、売上が立ってから平均して何ヶ月で現金化できているかを表します。
- 【目安】 通常1〜2ヶ月。これが3ヶ月以上など異常に長い場合、「架空売上の水増し(粉飾決算)」をしているか、あるいは「回収不能になった不良債権」をB/Sに放置している決定的な証拠になります。
サンプル企業の数値で分析:
・5,500,000円(売掛金) ÷ (50,000,000円 ÷ 12) = 1.32ヶ月 (日数換算で約40日)
・【診断結果】 約1.3ヶ月で非常にスピーディに売掛金が回収されています。サイト(支払い猶予期間)の条件が良く、未回収リスクの低い健全な取引先ばかりであると分かります。
②買入債務回転期間(支払月数)
- 【意味】 仕入れをしてから、実際に相手にお金を支払うまでに「平均何ヶ月引き延ばしているか」。
- 【目安】 売掛債権回収期間と同等、あるいはそれ以下であること。これが前年や前月に比べて急増している会社は、取引先への支払いをジャンプ(延期)してもらっているなど、資金繰りに困窮している末期サインです。
サンプル企業の数値で分析:
・1,450,000円(買掛金) ÷ (50,000,000円 ÷ 12) = 0.34ヶ月 (日数換算で約10日)
・【診断結果】 売掛金の回収(1.32ヶ月)よりも遥かに早いスピード(0.34ヶ月)で買掛金を支払っています。手元資金(現預金1,200万円)が潤沢にあるからこそできる、取引先から極めて信頼されやすい支払いサイクルです。
貸借対照表から会社の状況を読み解くには
ここまでの説明では1期分の貸借対照表の見方について説明してきました。しかし1期分の貸借対照表から読み取れるのは今期の結果のみす。3~5期分の貸借対照表を並べてみることで会社の推移を読み取ることができます。
現在の構造を把握したら、次は連続3期間以上のB/Sを横に並べて推移を見る会社の推移の視点を取り入れます。 B/Sは「会社の歴史」そのものです。「純資産が着実に増えているか」「借入金が年々膨らんでいないか」といった長期的なトレンドを見ることで、タテの分析で見つけた課題が「今年たまたま起きた一過性の問題」なのか、それとも「年々悪化している構造的な問題」なのかを正確に判断できます。
【サンプルA】良い会社・伸びる会社のB/S推移
利益がしっかりと内部留保として蓄積され、将来に向けた投資ができている理想的な成長モデルです。
3期比較 貸借対照表(B/S)推移表
| 区分・勘定科目 | 第1期 | 第2期 | 第3期 | トレンド・分析のポイント |
| 【流動資産】 | 20,000 | 25,000 | 30,000 | ↗ 現預金や売掛金などが着実に増加 |
| 【固定資産】 | 10,000 | 12,000 | 15,000 | ↗ 将来に向けた設備投資等により増加 |
| 資産 合計(左側) | 30,000 | 37,000 | 45,000 | ↗ 総資産が膨らみ、会社規模が拡大 |
| 【流動負債】 | 15,000 | 16,000 | 17,000 | → 買掛金など、売上増に伴う微増に留まる |
| 【固定負債】 | 10,000 | 12,000 | 14,000 | ↗ 長期借入金など、投資のための資金調達 |
| 【純資産】 | 5,000 | 9,000 | 14,000 | ↗ 毎期の利益(内部留保)の蓄積で大幅増 |
| 負債・純資産 合計(右側) | 30,000 | 37,000 | 45,000 | 💡 「資産合計」と1円単位まで完全一致 |
| (参考:自己資本比率) | 16.6% | 24.3% | 31.1% | ↗ クッション(基礎体力)が大幅に強化 |
| (参考:流動比率) | 133% | 156% | 176% | ↗ 短期の支払い能力・資金繰りも安全圏へ |
(単位:千円 )
🔍 税理士・会計事務所視点からの「ここが伸びる会社」の読み解き方
このB/S推移表は、先ほどの「良いサインが出ているP/L(増収増益モデル)」の成果が、会社の財務体質へ完璧にストックされている状態を表しています。
- 理想的な純資産の積み上がり: 純資産が 5,000 ⇒ 9,000 ⇒ 14,000 と倍以上になっています。これは、P/Lで稼いだ「当期純利益」が、外部に逃げることなくしっかりと会社に蓄積されている証拠です。
- 安全性指標の同時UP: 分母(総資産)が大きくなっているにもかかわらず、自己資本比率が 31.1%(優良ライン) まで急上昇しています。さらに、流動比率も 176%(目安の120%を大きくクリア) まで改善しているため、銀行融資の格付けも最高ランクになりやすく、ファクタリング会社などの債権審査でも「非常に回収リスクが低い優良企業」と判定される美しい推移です。
【サンプルB】悪化する会社のB/S推移(危険なサイン)
P/L(損益)だけでなく、B/Sにも明確な「資金繰り悪化の兆候」が表れている危険なモデルです。
| 区分・勘定科目 | 第1期 | 第2期 | 第3期 | トレンド・分析のポイント |
| 【流動資産】 | 20,000 | 18,000 | 15,000 | ↘ 現預金や売掛金が激減(手元の弾切れ) |
| 【固定資産】 | 10,000 | 8,000 | 5,000 | ↘ **資産の切り売り(タコ足食い)**が発生 |
| 資産 合計(左側) | 30,000 | 26,000 | 20,000 | ↘ 会社規模が急速に縮小(ジリ貧) |
| 【流動負債】 | 15,000 | 18,000 | 22,000 | ↗ 買掛金・未払金の急増(支払遅延の発生) |
| 【固定負債】 | 10,000 | 6,000 | 2,000 | ↘ 銀行への返済が進む(または新規融資拒否) |
| 【純資産】 | 5,000 | 2,000 | -4,000 | ↘ 赤字の累積で「債務超過」へ転落 |
| 負債・純資産 合計(右側) | 30,000 | 26,000 | 20,000 | 💡 「資産合計」と一致するが中身は火の車 |
| (参考:自己資本比率) | 16.6% | 7.6% | 債務超過 | 🚨 会社自体の「体力・クッション」が消滅 |
| (参考:流動比率) | 133% | 100% | 68% | 🚨 危険信号。目先の資金ショート寸前 |
(単位:千円 )
💡 プロのチェックポイント(ここが危険!)
- 買掛金・未払金(流動負債)の急増と流動比率の悪化:流動負債が急増し、流動比率が100%を大きく割り込んでいます。これは手元の現金より直近の支払いが多く、取引先への支払いを遅らせている(ジャンプしている)末期症状が疑われます。
- 固定資産の継続的な減少:新たな投資ができていないだけでなく、資金繰りのために土地や設備、保険などを解約・売却して食いつないでいる可能性があります。
- 純資産のマイナス(債務超過):赤字が蓄積し、ついに純資産がマイナス(債務超過)に転落しています。金融機関からの新規融資は極めて絶望的な状態です。
総合診断:清水税理士からのアドバイス
経営分析の指標は、個々の数字を単体で見るのではなく、「組み合わせ」でストーリーを読むことが大切です。
今回のサンプル企業は、「手元の現金が潤沢(流動比率243%)」で、「売掛金も1.3ヶ月でしっかり回収」し、「買掛金はすぐに現金で払う(0.34ヶ月)」という、お金が美しく、超ハイスピードで循環している理想的な状態です。設備投資(固定資産)も自己資本と長期借入の枠内に収まっており、非の打ち所がありません。
「自社の決算書でこれらの比率を計算したら、目安より悪かった…」
「損益分岐点や、適正な回収・支払サイトのバランスを知りたい」
そのようなお悩みがございましたら、ぜひ八王子の清水税理士事務所までお気軽にご相談ください。数字の裏に隠されたボトルネックを見つけ出し、会社のキャッシュを最大化する財務戦略を一緒に構築しましょう。
手元の決算書(貸借対照表)の数値を「万円単位」で以下に入力してください。自社の安全性、流動性、設備投資の適合度をリアルタイムで自動判定・診断します。
■ 自己資本比率 (財務安定性の土台) 判定
■ 流動比率 (短期の金銭支払能力) 判定
■ 当座比率 (即戦力支払能力) 判定
■ 設備投資安全性分析 (固定比率 & 固定長期適合率) 判定
※固定比率が100%を超えた場合でも、長期資金を考慮した「固定長期適合率」が100%以下に収まっていれば問題ありません。




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