今回は、年末調整の流れや確定申告との違い、確定申告が必要な人などについて簡単に書いていこうと思います。
「なぜ年末調整をするのか」について書いた記事もあるので、ぜひ読んでみてください!!

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年末調整、確定申告について質問する

「年末調整」と「確定申告」の違い

よく耳にするこの2つですが、何が違うか知っていますか?
今回は、初めての方にもわかりやすいように、なるべく簡単な言葉で書いていこうと思います。

「年末調整」とは?

会社員の方は、毎月給与から源泉所得税が引かれているかと思います。
これに控除などを含めて計算しなおして、その人の年間の所得税を確定し、過不足の清算を行うのが、「年末調整」です。
「年末調整」は、通常11月から1月頃にかけて行われます。

「控除」とは

控除には、①所得控除②税額控除の2つがあります。
どちらも税負担を減らせるものですが、減らす対象が違います。

①所得控除
所得税の金額を計算するもとである「所得」から減らせるものを指します。
(例えば、対象の親族がいる場合に適用される「扶養控除」や、所得の少ない配偶者がいる場合に適用される「配偶者控除」などがあります)
つまり、所得控除ができると、所得税を計算するもとである「所得」が減るため、税額も減るのです。

②税額控除
所得金額などから計算して出た「税額」から減らせるものを指します。
(例えば、住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)などがあります。)
税額控除は、納める税額自体を減らすことができます。

年末調整の流れ

年末調整はどのような手順で行われるのでしょうか。
「従業員が行うこと」と「会社が行うこと」に分けて、その流れをみていきましょう。

以下で、
※「扶養控除等(異動)申告書」
※「保険料控除申告書」
※「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
などが出てきますが、これらについては別の記事にて詳しく書こうと思うので、今回は簡単に流れだけを書いていきます。

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○従業員が行うこと

STEP1:「扶養控除等(異動)申告書」の提出
その給与取得者が扶養している配偶者や親族の有無を確認する書類です。
原則、この申告書はその年の最初のお給料をもらう時までに提出することになっています。
年末調整を受ける人は全員提出しなければなりません。

STEP2:「控除証明書」の収集
10月くらいから、自宅にハガキなどで「控除証明書」が届き始めるので、保管しておきましょう。
STEP3とともに会社に提出します。

STEP3:必要書類の提出
①「保険料控除申告書」の提出
(全員提出)
生命保険や地震保険などの保険に入っている人は、控除が受けられます。

②「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の提出(全員提出)

「基礎控除申告書」
所得税の納税者が受けられる最大48万円の所得控除
「配偶者控除等申告書」
要件を満たす配偶者がいる場合に適用される控除
「所得金額調整控除申告書」
子どもや介護者がいる世帯など、要件に該当する労働者に対する控除

令和6年は、定額減税があるので、定額減税に関する欄が増えた
「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に変わっています。

「住宅借入金等特別控除申告書」の提出(ある人のみ提出)
住宅ローンの年末残高に応じて、控除が受けられます。
年末調整で控除が受けられるのは、2年目以降で、最初の年は自分で確定申告が必要になります。

ここまでが従業員が行う作業で、ここから先は会社が行います。
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○会社が行うこと

STEP1:「源泉徴収税額」の集計
1~12月までの1年間で源泉徴収した税額がいくらかを集計します。
この合計金額が「源泉徴収税額」です。

STEP2:「年調減税額」を計算
①「課税総支給額」を出す
1~12月までの1年間の課税対象の総支給額を集計します。
(交通費など非課税となる金額は除きます)

②「給与所得控除」後の金額を計算する
「給与所得控除」とは、給与を得る者が収入金額に応じて受けられる控除で、最大55万円です。
①からこれを差し引いた後の金額が「給与所得」にあたります。

画像
国税庁HP「No.1410 給与所得控除」より
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

③各種「所得控除」の合計額を出す
まず1~12月の1年間で天引きした社会保険料等の金額を集計します。
そして、従業員から提出された申告書などをもとにして、控除できる金額の合計を出します。
このとき、「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」の額は含めません。

※他の控除は、税額を計算する前の所得から差し引く「所得控除」ですが、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、計算後の税額から差し引く「税額控除」であるためです。

④「課税給与所得金額」を出す
から③を引くことで、所得税を計算するもとになる金額、つまり課税される分の金額を出します。
これが「課税給与所得金額」です。

⑤「算出所得税額」を確認する
国税庁が掲載している以下の表に当てはめて計算し、算出所得税額がいくらであるかを確認します。

画像
国税庁HP「令和6年分の年末調整のための算出所得税額の速算表」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2024/pdf/18.pdf


⑥「年調所得税額」を出す
⑤から住宅借入金等特別控除住宅ローン控除)を差し引き、出たものが「年調所得税額」です。
※令和6年の年末調整では、定額減税があるため、ここからさらに「年調減税額」を差し引きます。

⑦「年調年税額」を出す
ここまで計算してきたものに 102.1% をかけたものが払うべき正しい税額となります。
これまで源泉徴収してきた「源泉徴収税額」に対し、「年調年税額」と呼びます。

STEP3:過不足額の清算
STEP1で出したすでに払っている「源泉徴収税額」とSTEP2で計算した納めるべき正しい税額である「年調年税額」を比べます。
その結果、多く引いていたらその分を返し、足りなかったら追加で徴収をします。

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以上のような流れで、年末調整が行われます。
これを会社員の方であれば、勤めている会社が行ってくれるのです。
そのため、基本的には確定申告は必要でない方がほとんどではないか思います。
しかし、会社員でも1年間の給与が全部で2,000万円を超えている方は年末調整の対象にならず、自分で「確定申告」をする必要があります。
また、年末調整ではできない控除があり、それを受けたい方も「確定申告」が必要になります。

このように、会社員でも年末調整の対象ならない人、会社でやってくれる年末調整の他に自分で確定申告をする必要のある人などがいます。
ここからは、「確定申告」についてみていきましょう。

「確定申告」とは?

年末調整は会社がやってくれるのに対し、確定申告は納税者本人が自分で納めるべき税額を計算し、申告します。
これにより、納めすぎていた分を返してもらうことができます。
翌年の2月16日から3月15日(祝休日の場合は翌日)までに申告します。
先ほども書いたように、基本的には、会社員の方は会社がやってくれるため必要ありませんが、確定申告をしなければならない人がいます。
また、年末調整ではできない控除を受けたい方も確定申告が必要です。
以下が、「確定申告をしなければならない人」、「確定申告した方がいい人」の代表的な対象者です。

<確定申告しなければならない人>

給与所得者(会社員など)
・1年間の給与が全部で2,000万円を超えている 
・副業していて、その所得が20万円を超えている
・給与以外の所得があり、20万円を超えている

個人事業主(フリーランス、自営業など)
・所得が48万円を超える

会社員の方で、会社で年末調整をしてくれた場合でも、副業で20万円を超える所得がある方は、年末調整とは別で確定申告をしなければなりません
年末調整と確定申告のどちらか一方だけでよいわけではないことに注意しましょう。

<確定申告した方がいい人>

  • 住宅ローンの控除を初めて受けたい(2回目からは年末調整で可能)
  • 年末調整ではできない控除を受けたい(医療費控除、寄付金控除、雑損控除を受けたい)

※医療費控除・・・病院にかかった費用、お薬代など
※寄付金控除・・・ふるさと納税、国や地方公共団体、NPO法人への寄付など
※雑損控除・・・・自然災害による損害、盗難による損害など

これら3つの控除と最初の年の住宅ローン控除は、年末調整では手続きができないため、適用したい方は確定申告が必要です。

まとめ

年末調整は、確定申告を代わりに会社がやってくれるようなものです。
年末調整、確定申告ともにできる控除の要件やその金額についても細かく決められているので、受けたい控除がある方は、一度調べてみてください!

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